2017年7月9日日曜日

ミャンマーで会社設立

外国企業の会社設立手続き・必要書類

1.ビジネス形態、投資形態の選択

まず、外国企業がミャンマーでビジネスを行う場合には、次のようなビジネス形態が想定される。

I.100%外国資本による企業設立

外国企業全額出資によるミャンマー法人の設立。①外国投資法(The Foreign Investment Law, 2012)および会社法(The Myanmar Companies Act, 1914)に基づき設立する方法と②会社法に基づき設立する方法がある。いずれの方法によるかは、原則として任意に選択できるものの、業種によっては①に基づき設立しなければならない。また、①の方法による場合、一部の業種においてはミャンマー国民または企業との合弁でなければならないため、かかる業種(外国投資法による制限業種)においてはこの形態は認められない。

II.合弁企業設立

外国企業または外国人とミャンマー国民または企業(民間または国営)との合弁。出資比率については、原則として、当事者の合意に基づき自由に定めることができる。しかし、制限業種における外国投資法に基づき設立された会社については、外国資本の出資比率上限は80%である。下限については、規定は存しない。なお、合弁相手が民間企業の場合はミャンマー会社法に基づき、合弁相手が国営企業の場合は特別会社法(The Special Company Act, 1950)に基づき設立される。

III.パートナーシップによる事業

外国企業がパートナーシップ法(The Partnership Act, 1932)に基づきパートナーシップ契約を締結し、企業形態を取らずに行う合弁事業で、パートナーは無限責任を負う。天然ガス・石油・鉱物資源の開発でミャンマー国営企業と生産分与契約を結ぶケースが代表例であり、開発品は契約上の割合で分与される。しかし、現在はパートナーシップ法は廃止されていないものの、ミャンマー企業であるか外国企業であるかを問わず、パートナーシップの登録をMinistry of National Planning and Economic Development, Directorate of Investment and Company Administration(国家計画経済開発省・投資企業管理局、以下、「DICA」という。)は行っていない。また、外国投資法の投資許可もなされない模様である。

IV.支店・駐在員事務所の設立

会社法において外国企業の支店(Branch Office)として定義されているのみであり、外国投資法上は明記されていない。法人格は外国企業(親会社)である。支店、駐在員事務所(Liaison Office)を設置する場合においても、現地法人の設立の場合と同様に会社法に基づき設立の申請手続を行う。なお、本邦・親会社では駐在員事務所としての進出であっても、当地会社法上は金融機関等一部の例外を除き「支店」として登記されるケースが一般的である。

V.ローカル企業との提携

ローカル企業に製造設備・機械を貸与または販売し、原料を供給し、製品を輸出する形態が一般的である(委託加工貿易の形態)。
上記、I.II. IVのビジネス形態を選ぶ場合、外国企業としては、会社(支店を含む)を設立する必要がある。その際、原則として次のいずれかを選択することになる。ただし、c)の方法については、2014年1月17日時点においては、ティラワ、ダウェイ、チャオピューが経済特区候補地であるものの、いずれも整備は完了しておらず、実際に選択肢となり得るには時間を要する。経済特区法(The Myanmar Special Economic Zone Law, 2011)についても、大きな改正が予定されていることから、本章においては紹介を省略する。また、既に述べたとおり、ホテル業等の一部の業種においてはa)の方法によらなければ事業を行うことができない。さらに、外国投資法に基づく場合には、2013年1月31日に公布された国家計画経済開発省(Ministry of National Planning and Economic Development)通知2013年11号(以下「外資法施行細則」という。)
および同日に公布されたミャンマー投資委員会(以下「MIC」という。)通知2013年1号(以下「MIC通知」という。)によって禁止または制限された業種が存する。

a) MICに投資申請し、外国投資法に基づく投資許可を受けた上、DICAから会社法に基づく営業許可を受ける場合(一般に、MIC Permitted Companyと呼ばれる)。
b) MICの許可を得ず(外国投資法によらず)、DICAから会社法に基づく営業許可を受ける場合。
c)経済特区法に基づき、管理委員会から許可を受ける場合。
 注)MIC・・・ミャンマー投資委員会(Myanmar Investment Commissionの略)のこと。MICは、投資提案書の審査、投資家からの苦情に対する必要な対応、連邦政府を通じて連邦議会において6カ月毎に開かれる会議への状況報告、投資許可書の発行等の権限および義務を有する

上記のa)またはb)のいずれを選択するかを検討する際の考慮要素としては、主に①外国投資法の恩恵を受ける必要性、②会社設立に要する時間および手続的負担、③初期投資額である。

①外国投資法の恩恵を受ける必要性に関して、新しい外国投資法(Foreign Investment Law、2012年11月2日公布)では、優遇措置として、税減免措置の恩典(外国投資法27条)や土地の長期の賃借権(最大50年、さらに、10年の延長を2回行うことができる。)等が存在する。そのため、製造業等においては長期の土地賃借が必要であるため、外国投資法の恩恵を受ける必要性が高い。

②会社設立に要する時間に関して、a)の場合には、b)の場合と異なり、会社法に基づく営業許可に加え、外国投資法に基づく投資許可を取得する必要がある。そのため、a)の場合には、必要書類が増加し、かつ、一般に外国投資法に基づく投資許可は会社法に基づく営業許可以上に取得までに時間を要する。

③初期投資額に関して、新しい外国投資法上は、最低資本金が規定されていない。そのため、最低資本金額はMICの裁量に基づくものの、従来の外国投資法下においては製造業50万米ドル、サービス業30万米ドルとされていたため、かかる資本金額が参考になると予想される。他方、会社法に基づく会社の最低資本金額は製造業15万米ドル、サービス業、旅行業、銀行・保険駐在員事務所5万米ドルであるため、a)の場合には、b)の場合よりも多額の初期投資が必要となる可能性が高い。

なお、支店と現地法人のいずれの形態を採るかについては、支店と現地法人とでは法人所得税率等の税率や現地債務への親会社の責任の有無等が異なるため、これらの点を考慮した上で検討することとなる。

また、会社の種類としては、次の4種類が存するが、①の非公開有限責任株式会社が、ミャンマー国民および外国人が設立する一般的な形態である。

会社法が基本法であり、下記4種類の会社が規定されている。
①有限責任株式会社(Company limited by shares)
外国投資家は100%外国資本で、または現地投資家に株式保有を認めて株式有限責任会社を設立できる。株式有限責任会社には「非公開会社」と「公開会社」があり、その定義は以下の通りである。なお、外国企業には「非公開会社」としての設立のみが認められている。
○非公開会社(Private Company)
株主2名以上50名以下。株式譲渡制限、株式・社債の公募禁止を定款で規定している。設立発起人は最低2人、設立総会は不要。
○公開会社(Public Company)
会社設立登記上、出資者7名以上。取締役予定者の同意書、基本定款と附属定款を登記局にて登録。
②株式資本を有する有限責任保証会社(Company limited by guarantee having share capital)
出資者は一定の額面を記載した株を発行し、口数に応じた持分が有り、会社清算時には保有株の額面の総額を上限とする責任を会社に負うのみである(会社法7条(1))。出資メンバー以外でも株を保有することにより利益の配当を得ることができる(会社法27条2))。
③株式資本を有しない有限責任保証会社(Company limited by guarantee not having share capital)
社員の地位は出資の口数に応じた持分であり、社員は出資金額を上限とする責任を会社に負うのみであり、それ以上の責任を債権者に対して直接負わされることは無い(会社法7条(1))。出資メンバー以外への利益の分配はできない(会社法27条(1))。
④株式資本を有しない無限責任会社(Unlimited company without share capital)会社清算時、会社財産で会社債務を完済できないときは、各社員が直接会社債権者に弁済しなければならない。

なお、次のI. II.に掲げる事業は、投資が禁止または制限された事業や特別な許認可を必要とする事業であり、当該事業を行う際には注意が必要である。加えて、2002年から外国企業が「商業(Trading;貿易業を含む卸売業、小売業)」として企業登記することが凍結されているため、現状、ミャンマー現地企業*のみ貿易業としての登記が可能である*。ただし、委託加工業者(CMP Company*)および製造業者の場合は、外国企業であっても、原材料、加工品等の輸出入は可能である(サービス業の場合も、所管官庁の許可が必要になるが、サービスに付随する材料、スペアーパーツなどを輸入することは可能である)。前述の「商業」はいわゆる農水産品等の物品貿易取引を対象としたものである。

注)1%でも外国資本が入ったミャンマー会社は外国会社として扱われる。
注)従来、商社等、「貿易業」として登記できていた「支店」扱いの会社では、「営業許可(Permitto Trade、後述3.Ⅲ参照)」の更新の際に、その活動が連絡業務(LIAISONRELATIONS)としてのみ許可される運用に変わった。その申請の際には、取引関係のある政府機関(省レベル)の推薦状を取り付け、添付が指導されている。ちなみに、その他業種については、支店登録申請時点で実際に行っている活動のみがField of Businessとして認められるようである。ミャンマー法による、公認会計士による監査レポートの提出も必要とされる。これは、実体のないトンネル会社を排除することを目的としたもののようである。
注)CMP Company・・・Cutting, Making and Packingの略で、委託加工業者のことを言う。輸入した原材料をすべて加工して輸出したうえ加工賃収入を得る業態で、一般に縫製業等に多い。輸入免税で、かつて徴収されていた10%の輸出税は現在廃止されている。この形態を希望する場合は、MICに申請し、承認を得た上で、企業登記手続きを行うことで、原材料輸入の免税を得ることができる(すでに他ビジネスを行うものが、CMPビジネスを業務に加えることはできないため、独立した会社を設立する必要がある)。

I.国営企業法に基づき民間参入が制限される分野
下記12分野の事業は国営企業法に基づき原則として民間企業の参入は認められない。しかし、政府により認められた場合には、民間企業であっても参入し得る。
a)チーク材の伐採とその販売・輸出
b)家庭消費用薪材を除くすべての植林および森林管理
c)石油・天然ガスの採掘・販売
d)真珠・ひすいその他宝石の採掘・輸出
e)魚・海老の養殖
f)郵便・通信事業
g)航空・鉄道事業
h)銀行・保険事業
i)ラジオ・テレビ放送事業
j)金属の採掘・精錬と輸出
k)発電事業
l)治安・国防上必要な産品の生産
II.外国投資法に基づき制限が課されている分野

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